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東京高等裁判所 平成6年(ネ)2710号 判決

主文

一  控訴人株式会社古野間商店、同古野間久及び同伊石政栄の各控訴及び被控訴人の当審における請求の減縮により、原判決主文第一項中控訴人株式会社古野間商店及び同古野間久に関する部分、同第四項及び同第五項を次のとおり変更する。

1  控訴人株式会社古野間商店及び同古野間久は、被控訴人に対し、各自一億〇六九四万九七五〇円及び内五八万円に対する平成二年六月六日から、内七六万円に対する同月二一日から、内三〇〇万円に対する同年七月六日から、内二〇〇万円に対する同月二一日から、内三八〇万円に対する同年八月六日から、内一五〇〇万円に対する同月八日から、内五三〇万円に対する同月二一日から、内二六二万円に対する同年九月六日から、内八六六万一九九〇円に対する平成三年一月三一日から、内一一三万二〇〇七円に対する同年一〇月三日から、内二万八八〇九円に対する平成六年三月一一日から、内六二万二一一七円に対する同月二五日から、内二九八七万〇六〇〇円に対する同年四月二九日から、内一六八一万一一七八円に対する同年七月一二日から、いずれも支払ずみまで年一八パーセントの割合による金員を支払え。

2  控訴人伊石政栄は、被控訴人に対し、三四五六万七二〇二円及び内五〇〇万円に対する平成二年八月八日から、内五〇〇万円に対する同月二一日から、内二四五六万七二〇二円に対する平成六年四月二九日から、いずれも支払ずみまで年一八パーセントの割合による金員を支払え。

3  被控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。

二  控訴人古野間光子の控訴を棄却する。ただし、被控訴人の当審における請求の減縮により、原判決主文第一項中右控訴人に関する部分は次のとおり変更された。

控訴人古野間光子は、被控訴人に対し、七二一二万六七〇一円及び内一五〇〇万円に対する平成二年八月八日から、内八六六万一九九〇円に対する平成三年一月三一日から、内一一三万二〇〇七円に対する同年一〇月三日から、内二万八八〇九円に対する平成六年三月一一日から、内六二万二一一七円に対する同月二五日から、内二九八七万〇六〇〇円に対する同年四月二九日から、内一六八一万一一七八円に対する同年七月一二日から、いずれも支払ずみまで年一八パーセントの割合による金員を支払え。

三  被控訴人と控訴人株式会社古野間商店、同古野間久及び同伊石政栄との間に生じた訴訟費用は第一・二審とも右控訴人らの負担とし、被控訴人と控訴人古野間光子との間に生じた控訴費用は右控訴人の負担とする。

理由

【事実及び理由】

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1 原判決中控訴人らに関する部分を取り消す。

2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。

3 訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

本件控訴をいずれも棄却する。ただし、当審において次のとおり請求を減縮した。

1 控訴人株式会社古野間商店及び同古野間久は、被控訴人に対し、各自一億〇六九四万九七五〇円及び内五八万円に対する平成二年六月五日から、内七六万円に対する同月二〇日から、内三〇〇万円に対する同年七月五日から、内二〇〇万円に対する同月二〇日から、内三八〇万円に対する同年八月五日から、内一五〇〇万円に対する同月八日から、内五三〇万円に対する同月二〇日から、内二六二万円に対する同年九月五日から、内八六六万一九九〇円に対する平成三年一月三一日から、内五〇万〇七一三円に対する同年一〇月三日(被控訴人の平成七年九月一八日付け訴変更申立書に「平成三年一〇月二日」とあるのは誤記であると認める。)から、内六三万一二九四円に対する同日から、内二万八八〇九円に対する平成六年三月一一日から(右訴変更申立書に「六六万〇一〇三円に対する平成三年一〇月三日から」とあるのは、内二万八八〇九円に関する部分については誤記であると認める。)、内六二万二一一七円に対する同月二五日から、内二九八七万〇六〇〇円に対する同年四月二九日から、内一六八一万一一七八円に対する同年七月一二日から、いずれも支払ずみまで年一八パーセントの割合による金員を支払え。

2 控訴人古野間光子は、被控訴人に対し、七二一二万六七〇一円及び内一五〇〇万円に対する平成二年八月八日から、内八六六万一九九〇円に対する平成三年一月三一日から、内五〇万〇七一三円に対する同年一〇月三日(前記訴変更申立書に「同年一〇月二日」とあるのは誤記であると認める。)から、内六三万一二九四円に対する同日から、内二万八八〇九円に対する平成六年三月一一日(右訴変更申立書に「六六万〇一〇三円に対する平成三年一〇月三日から」とあるのは、内二万八八〇九円に関する部分については誤記であると認める。)から、内六二万二一一七円に対する平成六年三月二五日から、内二九八七万〇六〇〇円に対する同年四月二九日から、内一六八一万一一七八円に対する同年七月一二日から、いずれも支払ずみまで年一八パーセントの割合による金員を支払え。

3 控訴人伊石政栄は、被控訴人に対し、三四五六万七二〇二円及び内五〇〇万円に対する平成二年八月八日から、内五〇〇万円に対する同月二〇日から、内二四五六万七二〇二円に対する平成六年四月二九日から、いずれも支払ずみまで年一八パーセントの割合による金員を支払え。

第二  事案の概要《略》

二 争点に関する当事者の主張

1  被控訴人による残債権放棄の意思表示の有無

(一)控訴人ら

控訴会社は、平成二年六月四日に不渡手形を出して倒産し、任意整理を続け、平成三年七月には、最終配当をすることになったので、各債権者に対し、抵当権によって担保されない一般債権については、残債権を放棄することを条件に債権額の六パーセントに相当する額の配当をする旨通知した(甲一六の1)ところ、被控訴人は、同月二六日、この申出を承諾し(乙三)、同年一一月二九日、一般債権額の六パーセントに相当する三五四万四七七六円を受領して、右残債権を放棄した。

(二) 被控訴人

右の事実を否認する。被控訴人としては、乙三は配当金の振込先の通知文書と理解して提出したものであり、残債権を放棄する意思は全くなかった。

2  錯誤及び重過失の有無

(一) 被控訴人

被控訴人は、前記1(二)のとおり、乙三は配当金の振込先の通知文書と理解して提出したのであるから、仮にこれが債権放棄の意思表示に当たるものとすれば、右意思表示は、要素の錯誤により無効である。

(二) 控訴人ら

仮に被控訴人の意思表示に要素の錯誤があるとしても、被控訴人には、重大な過失がある。

3  任意整理における主債務者に対する債権放棄の保証債権に及ぼす効果如何

(一) 被控訴人

本件におけるような任意整理においては、会社更生法二四〇条二項、破産法三二六条二項、三六六条の一三、和議法五七条等のような規定はないが、右規定の趣旨に則り、債権者が主債務者に対する債権を放棄した場合においても、その効果は保証債権には及ばないと解するのが相当である。

(二) 控訴人ら

本件任意整理は、破産法等の法的手続に準じて行われたものではないので、被控訴人の主張するような規定を類推適用すべきではなく、通常の保証債務の付従性に従って判断すべきであり、主債務者に対する債権が放棄されれば、保証債権も消滅すると解するのが相当である。

第三  争点についての判断

一  争点1(残債権放棄の有無)及び同2(錯誤及び重過失の有無)について

1 《証拠略》によれば、次の事実が認められる。

(一) 被控訴人は金融機関である。控訴会社は繊維製品の卸販売を目的とする会社であり、控訴人久はその代表取締役、同光子及び同伊石はその取締役であった。

(二) 控訴会社は、平成二年六月四日、約六億円の負債を抱えて倒産し(以下「本件倒産」という。)、弁護士山崎隆夫(以下「山崎弁護士」という。)に依頼して任意整理を行った。

(三) 被控訴人の代表権を有する理事榎並勇(以下「榎並理事」という。)は、貸出金の管理回収を担当していたが、本件倒産直後の同月五日、控訴会社を尋ねて山崎弁護士と面談し、控訴会社に対する債権が合計一億三八〇〇万円であること、控訴人ら所有の不動産に設定した根抵当権の極度額合計六〇〇〇万円、預金二〇〇〇万円、商業担保手形一五〇〇万円の合計約九五〇〇万円しか債権の回収が確保されていないこと、遅延損害金等もあるので、保証人らの不動産に対して仮差押えをするなどの話をし、同月一二日、一部の保証人らの不動産について請求債権合計六〇五六万円とする仮差押決定を得た。

(四) 山崎弁護士は、同月一三日の任意整理における債権者集会において、債権者らに対し、不動産については(任意)売却先を検討中である旨及び「金融債務は会社資産、その他役員の不動産に対する個人資産の処分で大部分返済できる予定であるが、不動産でカバーできなかった債権については一般債権として配当予定である。一般債権者は、その余の資産から配当を受けることになり、実質的には売掛金を回収した中から配当する予定である。」旨を記載した報告書を提出した。

(五) 山崎弁護士は、控訴会社の売掛金の回収を行い、平成三年一月一七日、一般債権の五パーセントに当たる金員を中間配当することとし、被控訴人に対し、同月二九日、被控訴人の一般債権額五九〇七万九六一六円(預金等との相殺後の総債権額一億一九〇七万九六一六円から根抵当権極度額六〇〇〇万円を控除した残額)の五パーセントに当たる二九五万三九八〇円を中間配当金として送金した。

(六) その後、山崎弁護士は、残余の一般債権を放棄することを条件に一般債権額の六パーセントに当たる金員を最終配当することとし、同年七月二六日ころ、被控訴人に対し、配当金額として三五四万四七七六円と記載したほか、「今回の配当が最終配当ですから、これを受領する事によって残債権を放棄して頂きます。但、抵当権でカバーされている被担保債権については、その限りで回収を認めます。」旨及び確認書(乙三。以下「本件確認書」という。)に必要事項を記載して返送されたい旨を記載した配当通知書(甲一六の1。以下「本件通知書」という。)を送付した。本件確認書には、「当社の株式会社古野間商店に対する債権は、下記の和解金を受け取ることによって残債権を放棄し、これ以外には当社は株式会社古野間商店に対して何らの債権債務の存在しないことを確認します。また、和解金は下記銀行口座に送金するよう指定致します。」と記載され、送金先として被控訴人の口座名を記入するような形式になっていた。

(七)榎並理事は、本件通知書を受領した段階では、控訴会社の不動産以外の資産からは二回の配当金以上に債権を回収することは事実上不可能であるので、不足分は根抵当権の目的不動産及び保証人らの一般財産から回収するしかないと考えており、本件通知書及び本件確認書の記載内容にもかかわらず、控訴会社の不動産以外の資産からの債権の回収を断念する趣旨であると誤解して、同月二七日、特段の内部手続等をすることなく、本件確認書に所定事項を記載し、被控訴人の記名押印をして山崎弁護士に返送し、同弁護士は、同月二九日、被控訴人に対する最終配当として、前記金員を被控訴人の指定した口座に振込送金した。

(八) 被控訴人が最終配当を受け取った後の同年七月二九日以降の交渉においては、被控訴人久は、被控訴人に対し、控訴会社、被控訴人久、同光子及び同伊石所有の不動産を処分し、更に右の者以外の保証人ら所有の不動産を処分し、最後に不動産の処分で返済できなかった残債権についても、保証人らが責任分担を決めて返済したい旨の申出をし、あるいは、被控訴人の根抵当権が後順位であることから、残元金全額の返済を目指して不動産の任意売却をしたい旨の申出をした。

2(一) 以上の事実、特に本件確認書の記載内容によれば、被控訴人と控訴会社とは、平成三年七月二七日ころ、和解をして配当金額を超える一般債権(抵当権で回収が確保されている被担保債権額を控除した残債権額)を放棄したものと認めるのが相当である。

(二) そして、特に被控訴人は根抵当権の設定や保証人らに対する仮差押えにより控訴会社に対する大部分の債権の回収を期待していた事実及び前記1(七)の事実によれば、榎並理事は、控訴会社の不動産以外の資産からの債権の回収が事実上不可能であることから、右資産からの回収すなわち本件任意整理におけるその余の配当を断念する趣旨であると誤解して本件確認書に記名押印をしたものであり、同理事の真意と本件確認書による意思表示との間には不一致があり、したがって、同理事の意思表示にはその要素に錯誤があるというべきである。

(三) ところで、榎並理事は、金融機関である被控訴人の代表権を有する理事であるから、任意整理の際の債権放棄や和解についてはかなりの知識があるものと推認されないではないが、前認定の事情に照らすと、同理事が錯誤により本件確認書に記名押印をして山崎弁護士に返送したことに重大な過失があるとまでいうことはできない。

すなわち、一般に債務者が倒産した場合に、会社更生、破産、和議などの各種の法定手続によらないで、いわゆる任意整理を行うことがあるが、この場合においてもその手続は、各債権者の協力のもとに、右の法廷の手続に準じて各債権の確認及び一定の割合による配当が行われ、配当がされない残余債権については、右の法定の手続におけるようなこれを消滅させる手続がないので、本件におけるように債権者が任意にこれを放棄することにするというのが一つの方法であり、また、このような任意整理については、会社更生法二四〇条二項、破産法三二六条二項等の規定が適用されないので、主債務者に対する債権の放棄は、原則として保証債権の消滅をも来すものと解さざるを得ないものというべきであるが、本件のように弁護士が中心となって任意整理が行われている場合において、法律専門家でない一般の債権者が、予め印刷されていたものであり当該債権者が自ら記載したものではなく、かつ、その真意とは明らかに異なる内容の文言が記載されている本件確認書のような書面に記名押印してこれを当該弁護士に送付したからといって、その結果の重要性にかんがみると、右の一事をもって、真意と異なることにつき、直ちに当該債権者に重大な過失があるということはできない。そして、本件においては、前認定のように、任意整理は、担保のない一般債権について、控訴会社の売掛金を回収しこれを原資として配当を行うこととしてされており、不動産担保の実行は別途に行うものとされていたこと、また、被控訴人としては、既に保証人らの不動産に対して請求債権額合計六〇五六万円とする仮差押決定を得ていること、更に、被控訴人は、金融機関として公的な存在であり、正当な法的手段を尽くして債権回収に努めるべきことが強く要請されるのであって、右のような仮差押決定まで得て保全されている債権を理由なく放棄することは全く考えられないところであり、榎並理事としては、このことを当然の事理として認識し行動していた(それ故、本件確認書を送付されるや、内部の決裁を得ることなく直ちにこれに記名押印をして送り返している。)と認められることその他前認定の事実からすると、同理事が本件確認書の趣旨を控訴会社の不動産以外の資産からの回収、すなわち本件任意整理におけるその余の配当を断念する趣旨のものと速断し、その送付により、控訴会社に対する債権が放棄され、また、これにより保証債権も放棄されることになるという点に考えが及ばなかったとしても、同理事の職務からするといささか軽率であったにしても、いまだ重大な過失があったものとは認められないというべきである。他に同理事に重大な過失があったものと認めるに足りる証拠はない。

二  結論

1 以上に述べたところによれば、控訴会社は被控訴人に対し残債務の元金及びこれに対する遅延損害金の支払義務がある。なお、被控訴人は、控訴会社に対し、前記第二の一10(三)の各手形金の残元金に対する満期からの約定遅延損害金の支払を求めているが、約定遅延損害金の発生日は満期の翌日と解すべきであるから、被控訴人の請求のうち遅延損害金の一部は理由がない。

2 控訴人久は、平成元年二月一六日、被控訴人に対し、控訴会社が本件基本契約に基づき現在及び将来負担する一切の債務について、元金及びこれに附帯する利息・損害金を包括保証するものとして、元金極度額を一億五〇〇〇万円として連帯保証をしたのであるから、前記第二の一10(二)の被控訴人の代位弁済による各求償債務を含め、右の範囲内にある控訴会社の前記1の債務のすべてを支払う義務がある。

3(一) 控訴人光子は、〈1〉平成元年二月一六日、被控訴人に対し、控訴会社が本件基本契約に基づき現在及び将来負担する一切の債務について、元金及びこれに附帯する利息・損害金を包括して保証するものとして、元金極度額を五〇〇〇万円として連帯保証をし、かつ、右連帯保証とは別に現在保証し又は将来保証したときは、右保証は前記連帯保証契約により変更されない旨の合意をした、〈2〉前記第二の一3(15)の貸付につき連帯保証をした、〈3〉前記第二の一5の第三者貸付につき、控訴会社の公庫に対する債務につき、被控訴人及び控訴人久とともに連帯保証をし、かつ、右保証人らの間で、被控訴人の負担部分を零とする旨の合意をした。

(二) 右〈3〉の保証については、被控訴人の負担部分は零であり、控訴人久及び同光子の負担部分は各二分の一であるから、代位弁済をした被控訴人は、右〈3〉の保証に基づき控訴人久及び同光子に対し、代位弁済の残元金(前記第二の一10(二))合計二九八七万〇六〇〇円の二分の一に当たる一四九三万五三〇〇円をそれぞれ求償することができる。

(三) 前記第二の一3の貸金のうち(4)、(8)ないし(14)の残元金(同10(一)(4)、(8)ないし(14))の合計は三三五九万四一一一円であり、また、右(二)の代位弁済の残元金のうち控訴人光子の前記負担部分に属しない分一四九三万五三〇〇円については、控訴会社の負う求償債務の保証として、控訴人光子の前記包括保証に含まれるものであるから、包括保証に係る元金の合計は四八五二万九四一一円となり前記(一)〈1〉の元金極度額の範囲内にある。

(四) 控訴人光子は、前記第二の一3(15)の貸金(残元金八六六万一九九〇円(同10(一)(15))につき連帯保証をしている。

(五) 以上のとおりであるから、控訴人光子は、被控訴人に対し、右(二)ないし(四)の残元金合計七二一二万六七〇一円及びこれに対する遅延損害金の支払義務がある(なお、被控訴人は、控訴人光子に対しては確定損害金の支払を請求していない。)。

4 控訴人伊石は、平成元年二月一六日、被控訴人に対し、控訴会社が本件基本契約に基づき現在及び将来負担する一切の債務について、元金及びこれに附帯する利息・損害金を包括保証するものとして、元金極度額を四〇〇〇万円として連帯保証をしたのであるから、被控訴人の請求に係る前記第二の一3(11)の残元金(同10(一)(11))のうち五〇〇万円、同8(1)の求償債権の残元金(同10二(1))のうち一一五八万八八六三円、同(3)の求償債権の残元金(同10(二)(3))一二九七万八三三九円、同9(9)及び(11)の手形金の残元金(同10(三)(9)及び(11))五〇〇万円の総計三四五六万七二〇二円及びこれに対する遅延損害金の支払義務がある。なお、被控訴人は、控訴人伊石に対し、前記第二の一10(三)(9)及び(11)の各手形金の残元金に対する満期からの約定遅延損害金の支払を求めているが、約定遅延損害金の発生日は満期の翌日と解すべきであるから、被控訴人の請求のうち遅延損害金の一部は一部理由がない。

よって、控訴会社、控訴人久及び同伊石の各控訴及び被控訴人の当審における請求の減縮により、原判決主文第一項中控訴会社及び控訴人久に関する部分、第四項及び第五項を主文第一項のとおり変更し、控訴人光子の控訴は理由がないから棄却し(ただし、被控訴人の当審における請求に減縮により、原判決主文第一項中控訴人光子に関する部分は主文第二項のとおり変更された。)、訴訟費用の負担につき民訴法九六条、九五条、八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 清水 湛 裁判官 瀬戸正義 裁判官 西口 元)

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